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卒業公演に2作品を提供することになった作者・唐沢による稽古場レポートです
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 今日は、本番の6回公演についてのレポートをお送りしたいと思います。
 通して観て驚くのは、本当にひとつとして同じ公演はないということです。 
 役者のコンディションも毎回違うし、その日のお客さんの反応度合いも違う。その組み合わせで毎日違う公演ができあがるというのが舞台のおもしろさなんですね。
 以下、忘れないうちに、メモをもとに1回目の公演から順番に振り返っていこうと思います。

■1回目/桃組(2/12木夜公演)

 最初のお客様は「おとなしい」という印象。
 一見した印象ですが、研修生のご家族とか、演劇を普段あまり見慣れていない方が多い感じ。舞台に集中はしているけど、反応はそれほど表に出さないように見えました。身内だったから緊張してたのかな(私みたいに)。
 「マダム・ノアールの占い事件簿」は、先ほどのゲネでかなりあがっていったので、今度は大丈夫かな?と思いきや、さらに固くなっていて、明らかに数カ所、セリフが真っ白になってしまい、あわてて創作している様子がみてとれました。いずれも稽古中は一度もとんだことがなかった箇所です。
 そういうミスが重なると、全体的に焦りが広がるのか、萎縮してしまってのびのびしたよいところが消えてしまい、ちょっと残念でした。
 そんな中、年の功(?)で一番落ち着いていたように見えたのが倉谷。なんとかこの浮き足立った雰囲気を立て直そうと奮闘しているのが伝わってきましたが、それが裏目に出て、妙に「しっかりした倉谷」に見えてしまいました。この作品を前から知っている友人の一人も「なんか地に足がついちゃった倉谷だったね」とコメントしていました。
 彼がどうこうというよりは、全体のバランスの問題なので、たまたまそう見えてしまったんだと思いますが、これが舞台のこわいところですね。
 「ファイティング・マザー」のほうはゲネに引き続き、安定した出来でした。桃組は最初は心配な部分がいろいろあったんですが、ラスト1週間でぐんとよくなり、コンビネーションが落ち着いたというか、常に一定以上のものを出せる安定感が感じられるようになってきました。

■2回目/桃組(2/13金昼公演)

 桃組2回目です。
 この日のお客様の特徴は、一言で言って「高年齢」(笑)。もっぱら私の関係のお客様が中心だったのですが、平日の昼ということで、年配のお客様や主婦の方などが圧倒的に多かったです。それは言い換えれば、研修生をまったく知らない(そしてエコーのお芝居も初めてという)お客様が多かったということ。
 で、その反応がどうだったかというと、1日目とは打って変わってものすごい反応の良さだったんです。「いくらなんでも笑い過ぎだろ」というくらい細かいところで笑いが大量に起こっていて、多分6回の公演を通して一番笑いが多かった公演だったんじゃないでしょうか。
 特に「ファイティング・マザー」のような人情の機微が中心になるお芝居は、人生経験が豊富なお客様ほど思い当たる節が多くて一挙手一投足一セリフに敏感になるのではと思いました。
 名古屋の初演でも意外なところで笑いがきてびっくりしたことがあったんですが、今度はまた「え?こんなところで?」という新たな笑いの鉱脈が発掘されていて、まだまだこの作品には私の知らない顔があると思いました。
 「マダム・ノアールの占い事件簿」は、初日のリベンジとばかりに、この日は緊張感を保ちつつ落ち着いた芝居になっていて安心しました。
 ただ、邪悪な念が憑依した千佳子が、勢い余ってソファの角に頭をぶつけて思わず「いてっ」と叫んだのにはドキドキしました(笑)。
 永井さんがあとで「流血してなくてよかったね」と言ってましたが、頭から流血しながら「悪用ってなんのこと〜?」とすがられたらかなり迫力があったかもしれないですね(笑)。 

■3回目/桜組(2/13金夜公演)

 桜組初日です。
 この回の公演は、6回中唯一席に余裕があった日で(他はすべて立ち見が出るほどの満席でした)、比較的、劇団関係者や業界関係者が多かったような気がします。私もこの日は前から2列目のセンターという公演中一番良い席で観劇することができました。
 正直なところ、桃組の初日の緊張感を観ているので、途中から登場する桜組はもっと緊張するんじゃないかととても心配していました。
 でも、予想に反して、すごく落ち着いていてなおかつ丁寧に演じているのが伝わってきて、稽古のときよりも確実にグレードアアップした出来だったと思います。
 笑いの反応も、昼公演と並ぶくらい豊富で(特に「マダム・ノアールの占い事件簿」はちょっと異様なくらい反応がよかったです)、中には笑いすぎて呼吸困難を起こしかけてる人もいました。
 桜組はマダムも木綿子も個性的なので、終演後に友達から「もう1チームもああいう感じの人なの?」としきりに聞かれて困りました。そんな…あんな個性派がそう都合良く何人もいるわけないでしょう!(笑)
 「桜も桃も全然雰囲気の違う人がやってるからまったく違うよ」と答えたら、「あ〜、観たい!もう1回観たい!もう1チーム観たい!」と地団駄踏んで悔しがっていたので、「だから私は最初から2チーム観るのがポイントですよ、ポイントですよって散々言ったでしょ!」と思わず望月のように熱弁をふるってしまいました。

■4回目/桜組(2/14土昼公演)

 桜組2回目です。
 この回の公演は最も入りがよかった回で、私は席が確保できず、劇団員の方達とともにギャラリーと呼ばれる2階の照明機材が設置されているスペースで観ました。
 初日はとても出来がよかった桜組でしたが、そういうときは往々にして「明日はもっとうまくやろう」という慢心というか欲というか色気というかスケベ心が入り込み、チームワークが乱れて思わぬミスが出たりするものなんですね(これが俗に言う「2日目落ち」というやつです)。
 この日の桜組は、残念ながらそれにはまってしまったような印象を受けました。初回のような緊張感がなかったし、ちょっとずつタイミングがしっくりきてないというか、集中力を欠いているように見えました。
 それは「マダム・ノアールの占い事件簿」だけでなく「ファイティング・マザー」も同様で、1場で最重要キーワードである「41歳には見えないよ」を抜かしてしまったときには血の気が引きました。そのあとのセリフを変えるわけにはいかないから「はっきり年言わないでよ」というセリフが取り残されてしまい、そこでまず「はっきり言ってないのに……」という矛盾が生じ、さらにそのあとに拓郎が「41歳がそんなに気になる?」と無理矢理セリフを変更して「41歳」を入れこんできたため、今度は「人の目」という4場につながる重要な伏線がすっぽり抜けおちてしまいました。
 編集もやり直しもきかないライブでは、一瞬一瞬が真剣勝負。研修生もそのこわさを身にしみて感じたのではないでしょうか。
 お客さんの反応は、この日はわりと控えめで、金曜昼と土曜昼の2回観たという友人は「金曜昼はカナちゃんがシーのチケットを出した時点ですでに1本目の作品とのリンクに気づいて笑ってたのに、土曜昼はまったく反応がなかった」と冷静に分析していました(笑)。
 
■5回目/桃組(2/14土夜公演)

 桃組千秋楽です。
 最後ということで、いい集中だったと思います。桃組は回を重ねるごとに調子をあげているように感じました。
 ただ、この日のお客さんは金曜昼と対照的で、ものすごーく年齢層が若かった!
 研修生のお友達とおぼしきお客さんが多かったように見えました。
 で、若いと明らかに反応する場所が少ないんですよ。ムッシュかまやつも40代以上でないと反応しないし、ましてや「東山千栄子」なんて誰も反応しない。
 この日、「東山千栄子に対するリアクションでその日の年齢層がわかるな」と確信しました。
 じつはこの「東山千栄子ネタ」が出てくるところですが、桜と桃では演技が違うんです。桃は普通なんですが、桜は団扇を持った拓郎が「東山千栄子さんがいいんだよねえ」と言いながら正座して団扇をあおぐ名シーンを再現するのです(これは桜拓郎によるこだわり演技プラン)。
 名前が出たところで笑うのが初級クラスだとしたら、この名場面再現で受けるのが中級クラスといったところでしょうか。
 ちなみに、金曜夜に最前列でご覧になっていた熊倉一雄さんは「団扇シーン」にかなり大爆笑されてました。
 …というと、「じゃあ上級は?」と聞かれそうですが、まあ「団扇を手にした時点で『あのシーン再現するな』と予測して笑うのが上級クラス」ってことにしておきます。
 桃組的には、前回(金曜昼)の反応があまりにも良かったので、この日は「笑いがこなくてあせった」と言っていましたが、べつに無理に笑わせる必要はないんだし、笑いがこなければダメなんだという強迫観念に陥ると、それが邪念となってかえって集中力を欠いてしまいます。
 そうは言っても役者としては「笑いが来る」のは嬉しいものだから、「笑い」にふりまわされて本末転倒になってしまうことってあるんですよね。喜劇役者はそういうとこはかなり冷静でストイックでないとやっていけないかもしれません。

■6回目/桜組(2/15日昼公演)

 桜組ラストで、なおかつ全体の千秋楽です。
 この日の反応もどちらかというとおとなしめでした。
 「マダム・ノアールの占い事件簿」はタイミングが微妙に合わず、1場から2場への転換でちょっとしたミスがあり、けっこうヒヤヒヤでした。
 「ファイティング・マザー」は、2場から3場にかけて、浮き足立ってるというか、テンポが早すぎて上滑りしているように感じたのがちょっと残念。もう少し緩急の「緩」のほうを落ち着いてはさめると「急」も生きたのではないかと思います。
 この日は、5年前に名古屋で初演したときに「拓郎」役を演じた梅林くんが観にきてくれました(現在、東京で役者活動中)。拓郎のセリフは今でもしっかり覚えているそうです。
 観る前はけっこう疲れ気味のご様子だったんですが、観終わったあとは(いろいろなことを思い出したのか)ものすごく高揚して、その後数時間、公演内容について熱く語りまくっていました。
 私よりも、むしろ研修生に語ってほしい内容でしたが、さすがに同じ作品にガッツリ取り組んだ経験があるだけに思い入れの強さが違います。。。
 かなり具体的な感想がきけて興味深かったです。
 どこまで本気かわかりませんが、「一度、両チームの拓郎を前にしてゆっくり語りたい!」と言ってました。勇気のある拓郎は申し出てください(笑)。

 以上、ざっとですが、6回の公演を振り返ってみました。
 1回しか観られないお客様(それがほとんどだと思いますが)は、「私が観た日は調子が悪かったの?」とがっかりされるかもしれませんが、これがライブの不確実性というものです。
 人間ですから、一生懸命やっても毎回同じようにはできません。それでも、その波をできるだけ最小限に食い止められるのがプロです。
 研修生は、お客様にとっては1回1回が「ただ一度の舞台」なのだということを胆に銘じて、これからの舞台に取り組んでいってほしいと思っています。

 長くなりましたが、このへんで。
 次は打ち上げの様子のレポートでこのブログをお開きにしたいと思います。


 

左は開場を待つ初日のロビー。
終演後はラッシュ時の電車のようになります。
右は開場を待つ舞台。

 

左は「マダム・ノアールの占い事件簿」冒頭のシーン。
右は「ファイティング・マザー」の3場のシーン。

  

左はカーテンコールで挨拶する出演者たち。
右は千秋楽を無事終えた楽屋で。


以上4枚の画像はテアトル・エコーのサイトから拝借しました。

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 怒濤のような4日間が終わりました。
 お陰さまで、毎公演立ち見が出るほどの大盛況で、大入袋も配られました。



 ずっと稽古場で見続けている関係者は、正直、初めて観る人がこの舞台をどう判断してくれるのか、幕が開くまで確信がもてません。
 もちろん、「うまくなってきた」「よくなってきた」という感触は稽古中にある程度つかむことはできますが、あまり見すぎてしまうと、感覚が麻痺してしまうというか、まっさらな目で見ることが難しくなるのです。
 本当に喜んでもらえるのか。楽しんでもらえるのか。
 下(↓)の記事にはああ書きましたが、内心は「大丈夫」「でも本番は何が起こるかわからないし」…とエンドレスに葛藤が渦巻いていました。

 まず最初の関門は、初日(12日)の午後に行われた先発チーム(桃組)のゲネプロ(通し稽古)。
 ゲネプロは本番とまったく同じ段取りで行われる直前の最終稽古ですが、今回はエコーの劇団員の方がかなり観にいらしていて、研修生たちは早くも大緊張。
 劇団の方は普段からコメディを専門にやっているプロばかりですから、まあ言い方は悪いですけど「すれて」います。
 そう簡単に笑ったり泣いたりはしてくれないし、特に研修生の公演となると「今年はどういう子がいるのかしら」という視察が目的のメインになるため、比較的冷静な視線で観にこられる方が多いと聞きました。
 開演前のマエセツ(携帯電話をきれとかそのたぐいの説明)に研修生が登場したときから、すでに劇団員からつっこみの洗礼が(笑)。
 いや、愛情だと思うのですが、それで研修生の緊張はますます上昇。「すいません!すいません!」と無闇に謝りながらトイレの場所ひとつ説明するのにもしどろもどろの状況に。

 やがて1作目の「マダム・ノアールの占い事件簿」が開幕。
 ……やば。皆、すっごく緊張してるよ
 稽古ではなかったようなセリフの言い間違いも目立ち、観ているこっちも心拍数があがってしまいました。
 隣を見ると永井さんも緊張の面持ち。
 緊張って移るんですよ〜、どんどん。
 でも2作目の「ファイティング・マザー」では1作目ほどの緊張は見えず、劇団員の方からの笑いも活発に起きるように。
 と安心したのもつかの間、1場と2場の転換時、幕前芝居で上手に寄りすぎた望月が、上手から運び込まれる美容室の椅子とぶつかってしまい、椅子の下の部分がはずれてしまうというアクシデントが!
 あせって必死に上下をくっつけようとする転換担当の研修生。でもどうやっても元に戻らない。
 ブリッジの音楽が終わったら明るくなって2場が始まってしまう!
 どうする!どうする!
 そこへ現れる救世主・金子さん。
 さあ、今こそ舞台監督の腕の見せ所。頼む〜、金子さん!
 が、やっぱり椅子は現状復帰できず、あっさり諦めた金子さんは、うす暗がりの中でゆっくりと客席に一礼したあと、そのまま壊れた椅子を撤収。
 結局、2場は1つの椅子だけで通したのでした(本来は2つ並んでいるんですが)。
 いやー、さすがです、金子さん。
 これがナマもののこわさというものなんですね。でも本番でなくてよかった。

 その後は特に大きなアクシデントもなく無事にゲネは終了。
 カーテンコールでは、緊張が解けて泣いてしまいました(私が)。
 「よくここまできたね」という、もうほんとに親の気分
 劇団員の方の反応もとてもよく、「ゲネだけ観にくればいいと思ったけど、もう1チームも観たくなった。また本番に来るわ」と言われたときは本当に嬉しかったです。

 というわけで、続きはまた次回!
公演詳細
「マダム・ノアールの占い事件簿」
「ファイティング・マザー」


作  ●唐沢伊万里
演 出●永井 寛孝
出 演●テアトル・エコー研修生(5期)20名
公演日●2009年2月
    12日(木)19;00(桃)
    13日(金)14;00(桃)/19;00(桜)
    14日(土)14;00(桜)/19;00(桃)
    15日(日)14;00(桜)
         計6回公演
料 金●2,000円(全席自由)
会 場●エコー劇場(恵比寿)
問合せ●テアトル・エコー
※公演は無事終了しました
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プロフィール
HN:
唐沢伊万里
性別:
女性
職業:
劇作家
自己紹介:

東宝アカデミー劇作家養成講座修了
劇作家集団「一葉会」メンバー

<受賞歴>
「ファイティング・マザー」
(名古屋文化振興賞戯曲部門入選)
「病院ミシュラン」
(テアトル・エコー創作戯曲賞佳作入選)

<上演歴>
「マダム・ノアールの占い事件簿」「ファイティング・マザー」「ハーフムーン」「セッション」
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